《MUMEI》
黒衣装
「ねぇリュート」

オムレツにナイフを入れながら、アンリ様が切り出されました。

「ハロウィンって知ってる?」

「ハロウィン‥ですか?」

何かのお祭──という事は聞いた事があるような気がしますが‥。

「仮装をしてね、夜──お菓子を貰いに家々を回って歩くの」

「そうなんですか──」

「でも私──した事なくて」

悲しげな笑みを浮かべて俯かれたアンリ様を見て、僕はある事を思い付きました。

「では──僕がお菓子を用意しておきますので、仮装なされては如何でしょう」

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