《MUMEI》

「‥ぁ‥」

アンリ様は、黒いサテンの布を広げてらっしゃいました。

「その布で衣装を御作りになるんですね──」

「うん。リュートのもこれで作るの」

型紙を当て、慣れた手付きで印を付けながら微笑むと、アンリ様はその布を裁ち始めました。

「───────」

見事なまでの手捌きは、まるで手品を見ているよう。

「凄いですね──」

「ぇ‥?」

「アンリ様は凄いです」

僕が言うと、アンリ様はうっすらと頬を染めて俯かれました。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫