《MUMEI》
親友以上恋人未満
樹を硝子越しに抱く
抱擁といっても良し
如何わしい意味も良し
俺がアヅサとして、最高で最悪な時間だ。
こんな図体の割に、欲情は自らであまり示さない。
他人に迫られてから応える受け身の姿勢。
だから俺直々にこうして、たまに吐き出してやったり。まあ、今日は特別だが。
樹は、自分の容姿を嫌う為、何も言わないが一般レベルでは、かなり恵まれている。 小さい頃は評判の美人だったし。
その辺の俳優にも引けをとらない、寧ろ優勢。
襟足が伸びてきた茶髪
くっきりした目鼻立ち、女なら、あの逞しい身体に抱かれなくない訳ない。
たまに眩しそうに俯いた時の更に切れ長になる眼が俺はお気に入り。
「ヒッ、……ん、ふぅ……」
低い呻きに何とも興奮
樹のハスキィ声だけであと三回は持つ。
普段なら絶対聞けない、
俺達しか聞けない。
最高で最悪
思い知らされる
俺は誰より樹を思っていると、けど樹は違う。
俺達は誰よりも繋がっているだけで
何も知らない。
俺が樹を手に入れられないなら、
樹が俺を離せないように仕込めば良い
樹は最近見るからに参っている。何処のどいつか知りたくもないが、
俺に逆らうというのなら、容赦はしない。
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