《MUMEI》
欄チャンと葵チャン
(どうしよう……嬉しい!)


欄チャンは布団に顔を埋めたまま嬉し涙を流していた。


ぬいぐるみの僕には、こんな風に人を愛して涙を流すことが出来ないから、嬉し涙を流す欄チャンが何だかとってもキラキラして見えた。


夕ご飯を食べ終えて落ち着いた欄チャンは、新しいクラスのことを色々話してくれた。


その日の欄チャンはいつもよりお喋りで、よく笑ってた。


金本くんと同じクラスになれたのもあるけど、幼なじみで親友の葵(あおい)チャンと同じクラスになれたのも嬉しかったみたい。


でもその喜びが悲しみに変わってしまったのは数日後だった。


その日の欄チャンは、下を向いて唇をギュッと噛み締めて部屋に帰って来た。


そんな欄チャンを見ると僕も悲しくなって


“欄チャンどうしたの?”って聞いたんだ。


欄チャンは床に座って暫くぼーっとしてた。


僕はそんな欄チャンをじっと見守ることしか出来なかった。


だんだん日が沈み始めて欄チャンの部屋も薄暗くなってきた頃、欄チャンの頬を透き通った液体が流れるのが見えた。


その液体は膝の上に置いてあった欄チャンの手の甲に落ちた。

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