《MUMEI》

「え?何だって?」


「………。」


「何しでかしたって?」


「………。」


「颯…ちゃん?」


俺は上半身を起こして、
隣りに寝ている颯ちゃんを見下ろした。


颯ちゃんは両目を閉じて、
唇をきつく結び、
苦しそうな表情をしていた。


手が少し震えているのが分かる。


「颯ちゃん!」


俺は颯ちゃんの肩を揺すぶった。


「おい、颯ちゃん!!」


すると、颯ちゃんは我に返ったのか、
突然目を見開くと、
気まずそうに俺から顔を背けた。


「……嘘ついたんだ。」

そして、小さな声でそう告げる。


「嘘?」


「ああ……。」


「誰に?」


そう聞くと、
颯ちゃんはますます顔をこわ張らせた。


その表情にまさか、と血が騒ぐ。


「颯ちゃんの……親父…?」


颯ちゃんの肩がビクッと震えた。


やはりそうなのか……。


「ヤバいよな……。」


颯ちゃんの顔は血の気が全くなく、
まるで死人のようだ。


俺はいたたまれなくなって、
夢中で考えを巡らせた。


颯ちゃんの嘘に対する回避について。

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