《MUMEI》

俺の上から勢いよく起き上がった金谷。



俺は、荒い息を整えながら、必死に毛布を手繰り寄せる。



毛布に包まって、壁側に身を寄せて。


涙とおかしな汗と唾液で…


ぐちゃぐちゃだ…。


「…ハッ、………
はぁ、ひっ、ヤダ……、や…」
「んだよ!誰だよそれ!しゅうへい??ふざけんな!俺はお前の事ずっとずっと見てきたんだぞ、…ふざけんな、ふざけんなよ……誰だよ、誰なんだよ……」

「……かな…や…、やだ!離せよ!!」
両肩を掴まれがくがくと揺すぶられる。
「怖い、やだ、怖い、こわ……」

「そいつとは付き合ってンのか?もう寝たのか?」
「な……も、ない…
ヒクッ、なんも……、
してくれない…… 、なんも、なんも」
「好きなんか」

必死なって、何度も、何度も、頷く。

「…………」

「…………」






「何処の、誰?」





「いつから惚れた」




「向こうは勇樹の事どう想ってんだ」





色々聞かれて、答えてる内に冷静になって。


よく見たら金谷は、とても辛い表情をしていた。



そうだ




金谷は俺が好き…で



俺は修平が好きだから




俺と金谷は片想いなんだ。



こんなどうしようもない、酷い辛さを知っている…

「金谷…ごめんな、金谷じゃなくてごめん、ごめん…」



俺を掴む力が徐々に抜け、金谷の両手が下に落ちる。








何度かの深い呼吸音。





「キス一つでお前の心奪うなんてな…、……元…弟かい…」


初めて自分の気持ちに気付いてからまだ数時間しか経っていないのに金谷に全てを話してしまった。


金谷は無言で部屋を出て行った。



俺は自分の事をあまり話した事がないからなのか、泣いたからなのかはわからないが…、



いきなり強烈に頭がガンガン痛くなってきて、俺は頭を両手で必死に押さえた。

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