《MUMEI》
ある意味最強
「そんなに怖がらなくていいよ」


(いらっしゃったんですね!)


台所から、大志さんが顔を出したから、俺は心底ホッとした。


「何? 私が怖かったの?」


(今も怖いです…)


そう思ったが、口には出さなかった。


「果穂さんは、俺と厳に怒ってるんだよ」

「「頼」」


振り返ると、少しよそ行きな感じの私服の頼がいた。

誕生日なのにラフな格好の厳とは大違いだった。


「どういう意味だ?」

「それは…」

「それは、後で」


話を遮ったのは、今度は大志さんだった。


「先にパーティーしようよ」


大志さんはいつものように温かい微笑みを浮かべた。

「そうね」


その言葉に、ブリザード果穂さんがあっさり従った。

(すごいなあ…)


感心する俺に、大志さんは乾杯用のジュースが入ったグラスを渡してくれた。


その時


「ごめんね。今日の果穂はちょっと不機嫌だから」

「ちょっと!?」


(あれの、何処が!?)


目を丸くする俺に、大志さんが告げた。


「昔よりは大人しくなったんだよ、あれでも」


『内緒にしてね』と笑って、大志さんは果穂さんの隣に行った。

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