《MUMEI》 疑惑三人はもうずいぶんな距離を走っていた。処刑上からかなり離れた路地裏へと駆け込む三人は息も切れ切れで、はぁはぁとへばっていた。 呼吸が落ち着いてきた男はまだ息の荒い二人に声をかける。 「ここまで来たら、もう大丈夫だろ」 少し安心した様子で言い汗を拭う。二人はまだ話もできないようで頷いて返すことしかできなかった。 二人が元に戻るまで男は追手がいないかあたりに気を配っている。女と少女も息が整い始め、やっと会話ができるようになった。 女が汗で張り付いた髪を払い、女の中で気になっていたことを話し出す。 「それにしてもいったいなんだったの。私たち何もしてないのにどうしてあんな事されたの、もうわけが分かんないんだけど」 自分がなぜ処刑台に立たされたのか、怒った様子で二人に聞く。 「いきなり捕まえられて、縛られて。どういうことなの、説明しなさいよファース」 怒りの矛先はファースへと向けられる。 「私たちがあいつらに捕まえられるときあいつら言ってたわよね、あなたが犯人だって。何かしたの」 俯き口ごもってしまい、少し時間がたつ。そしてファースは否定した。 「俺だってさっぱり分かんねえよ。濡れ衣だって、軍の奴らが勘違いしたんだ・・・・・俺は何もしてない」 ファースの答えが腑に落ちない女は食い下がり、 「勘違い、勘違いってなに。ほんとに犯人じゃないんでしょうね。もし嘘でもついてたら許さないんだからね、もしかしたらあなたのせいで私たちまで殺されるところだったんだから」 「・・ね、ねぇ。ファースくん・・メリルちゃんも・・・」 険悪な雰囲気が三人の中にでき、少女は二人を止めようとするが行動に移せずおろおろしていた。そんな少女には目もくれずメリルはファースへの言葉を止められずつづける。 「火のないところに煙は立たないっていうじゃない。何かあったんじゃないの教えて、私もクレアも死ぬところだったのよ」 死を目の当たりにした心がはやり止まらず、その危機をもたらした可能性のある者へ不満がぶつけられる。 詰め寄ってくるメリルにファースは我慢できず怒鳴ってしまう。 「なにもないって言ってるだろ!嘘じゃない、俺は知らないんだよっ!」 ファースは伏せていた顔をあげて気づいた。メリルの目には涙が薄っすらたまっていて、今にも零れ落ちそうなことに。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |