《MUMEI》 「あれは??」 おれが指差す先には、白猫が一匹。 「ちょっと待ってね」 蓬田が呟いてネコに近づいていく。 ネコは逃げるどころか、蓬田に擦り寄ってくる。 …スゲーなあ。 おれなんか、すぐ逃げられる。 おれがネコに逃げられんのは昔っからだったから、 ネコが寄ってくんのは、蓬田の才能だな。 そんなことを考えていると、蓬田が 「違うみたい」 と、苦笑しながら戻ってきた。 さっきからこの調子。 ネコ探したってどうにもなんないかもしれねえけど、 おれ達にできんのは小さな望みにも縋りつくことだけだ。 『きゃんきゃん!!』 ゴジラがうるさく鳴くので、 「なんだよ、」 とゴジラが吠えている方を見ると、白いしっぽがちらりと見えた。 「蓬田、あれ」 おれが駆け出すと、蓬田も慌ててついてくる。 植え込みの中に消えたネコを追っていくと、 「ねえ、ここって―…」 蓬田が、立ち止まった。 「え??」 おれも立ち止まって、蓬田の視線を追う。 視線の先には、 『櫻木総合病院』の看板。 ―…おれ達が運ばれた病院、だ。 前へ |次へ |
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