《MUMEI》 第一華賑わう通りを行く、2人の武士。 前を行くのは、二十歳位の若人。 出で立ちこそ武士であるが、結いもせず、只無造作にばさっとさせた髪は、放浪をしてきた事を伺わせる。 その後ろを付いて行くのは、十五位の少年──否、娘である。 だが若人はまだ、その事を知らない。 娘は黒髪を上の方で結い上げ、些か大きめの武士装束を纏っている。 「おおっ草助、団子屋があるぞっ」 「さっきも食ったろ‥? もう五文しかねぇんだから我慢しろ」 草助、と呼ばれた若人が呆れ気味に振り返り咎めると、むぅ、と膨れっ面をして、 「腹が減っては戦は出来ぬのだぞ?」 雛菊──を華郎と名乗っている──は、せこせこと後を付いて歩きながら言った。 草助は、大袈裟に溜め息をつくと、 「一本だけだからな‥?」 一本だけ、という言葉を強めて言い、雛菊を連れて団子屋へと入って行く。 次へ |
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