《MUMEI》
春 序章
僕等の話は春から始まった。
去年の春。
あの四季島で。
彼女と僕とみんなの話は…。

「オェ…ウッ…」
大海原を進む一隻の漁船。
「気持ち悪い…」
少年は船体から身を乗り出し、吐いていた。
「情けねぇな〜!漁師には向いてねぇよ!」
「いや…漁師は…オェ…」
「ほら!見えてきたぞ〜!日本でもっとも四季を満喫出来る島!四季島だ!」
少年はゆっくりと顔を上げ船の前方に目をやる。
季節は春。
綺麗なピンクに色を染めた島が目に入った。
「あれが…四季島。」



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