《MUMEI》

「…お前、ほんとにそれで行くの?」



おれが見上げる蓬田―…『おれ』の姿は、



「絶対、怪しいって」



黒いハットに、サングラス、マスク。


―…マスク!?



「だって、西城先輩に気付かれないようにしないと…」



もごもごと言う蓬田。



「んな格好してっと、逆に目立つだろーが」


「…じゃあ、マスクは外すね」


「帽子とサングラスも取れよ」


「ええ??これは似合ってるからいいでしょう?
…椎名くん、顔ちっさいねえ!!
サングラスがおっきく見えるね!」



感心したように言う蓬田。



全く、そんな帽子とサングラス、
どこから持ってきたんだか。



―…まあ、なんか嬉しそうだし、いっか。



「…行くぞ」


「うん」



おれ達は、薄暗くなった道を、
駅に向かって歩き出した。

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