《MUMEI》

「なぁ」

「ん、何だ? 草助」

「お前、何で侍なんかやってんだ?」

 草助の問いに、雛菊は、ふふん、と得意げに笑った。

「知りたいか? お前には特別に教えてやっても良いぞ?」

 雛菊の態度に、草助はもはや苦笑を浮かべるしかない。

「命の恩人に団子奢らせといて‥お前呼ばわりかよ」

 そう言った草助に、雛菊は悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。

「ん、何か不満か? 草助殿」

「分かった分かった‥普通に呼んでいいから」

 頭が痛くなる、と思いながら一気に茶を飲み干すと、草助は席を立った。

「こら待てっ。拙者を置いて行くつもりか‥!?」

 慌てる雛菊の頭に、ぽん、と手を置くと、

「待っててやるから──それ食ったら出てきな」

 彼は苦笑して言い、先に団子屋から出て行った。

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