《MUMEI》

「何故先に出て行ってしまうのだ‥? 全く‥」

 ぶつぶつと文句を零しながら団子を頬張る雛菊。

「しかし──団子というのは美味なものだな」

 最後の一つを口に入れると、串を手にしたまま暖簾を潜る。

「女将、なかなか美味であったぞ」

そう言って外へと踏み出した。

「やっと来たかぁ」

「ひゃっ!?」

 思わず素頓狂な悲鳴を上げた雛菊に、若人は笑い出す。

「ははっ、何だ、びっくりしたか?」

「び、びっくりなどしておらぬわっ」

「わりいわりい。てか、おらぬわ、って‥」

 むきになって拳を振り上げる雛菊を宥め、草助は歩き出す。

「華郎」

「‥‥‥何だ」

「お前、何であの夜あんな所にいたんだ‥?」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫