《MUMEI》

「その嘘って…どんなものだ?」


「……誤魔化したんだ。」


「誤魔化した?」


「ああ。
昨日の蓮翔ちゃんの試合観に行ったこと……。

アレ、自主練ってことになっているんだ。」


「……え?」


「ヤバいよな…。

きっともうテレビか何かで見てるぜ。」


そう言うと颯ちゃんは体操座りの体勢で、
頭を抱え込むようにした。


そしてハッと息を注ぐ。

「まだ……何かあるのか?」


颯ちゃんは言いにくそうに軽く頷くと、


「今日の新聞…。

俺…観客席にいただろ?」


「うん…まさか…!」


「ああ。
一般人と写ってるんだ。

父さんが見たらなんて言うか…。」


「俺は構わねぇけど、
それは不味いな……。」

「新聞は持って来てしまったけど、
父さんのことだから……。」


「絶対知ってるな……。」


「お前は言いのかよ?」


颯ちゃんが不意に俺の方に顔を向ける。


「ん?俺?」


「ああ。
怒られないのか?」


「ん〜、
以前だったら殺されてたな。」


「以前だったら?

今は大丈夫なのかよ?」


「まあ、ちょっとね!」


そう言うと、
怪訝そうに見る颯ちゃんに笑って見せた。

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