《MUMEI》
ある金曜日に
ある金曜日、昌は正平と明日の休みの話しをした。
「明日は6時に起きよう、早くこだま達に会いに行きたいんだ。」
正平はパジャマを着てた手を止めた、
「兄ちゃん……明日ね、遊べない。友達のお誕生会に呼ばれたんだ」
しばし、沈黙
「ずっと前から……約束、したじゃないか。」
昌は正平を見つめ、肩を揺らした。顔からは昌は何を考えているのか読み取れない、無表情。
「でも、友達のお誕生日は一回しかできないよ、お山にはいつだって行けるじゃない!」
「違う、こだまは冬眠する、会えるのは秋までなんだ! きっともうすぐ、春まで会えなくなる。
……知ってるよ。正平は兄ちゃんを裏切るつもりなんだろ?」
「痛いよ、痛い!離して兄ちゃん!」
昌は正平の肩から力の入っていた両手を退ける。
「離すか、離すもんか……学校か?
学校が、僕を裏切ろって命令したんだろ!」
昌は息を荒らげ、玩具箱の縄跳びを手にしている。
捕まる
正平の本能が、伝達する。必死に玄関まで飛び出す。
帰宅した父親にぶつかり、そのまま正平は足にしがみついた。
「父さんお帰り。」
昌は何事も無かったようにいつも通りの笑顔で出迎えた。
右手に縄跳びを持って。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫