《MUMEI》
膨らむ違和感
「何でそんな事言うんだよ。おかしいぞ、今日の頼は」

「そう?」


(絶対におかしい)


頼だけじゃない。


果穂さんも、大志さんも


秀さんも、志穂さんも


そして


俺は、チラッと厳と、厳の周りにいる女の子達を見た。


考えてみれば、あの集団の中で頼に話しかけてきたのはさっきの女の子だけだった。


(絶対、おかしい)


俺と目が合うと、厳は笑う。


松本は、軽く会釈をする。

石川は、手を振る。


しかし、それだけだ。


それだけなんて…


(普通、おかしいだろ?)


厳や石川はともかく


松本は、俺と会うと必ず近くに来て挨拶するのに。


今日は、微妙な距離感があった。


(それに)


律儀な性格の松本なら、いくら厳が好きでも、俺と同じように二人分のプレゼントを用意するはずなのに


何故か、厳にしかプレゼントを渡していなかった。


「まあいいじゃん。プレゼント、洋服だろ?」


俺のプレゼントは、龍平さんのショップのロゴが入った袋に入っていた。


「お前と厳は好みが違うだろ?」


俺は、頼には無地・厳にはかなり大きなバックプリントのついた半袖Tシャツを選んでいた。

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