《MUMEI》

「そうだ。お前は今日から拙者の師匠だ。喜べ」

「喜べって‥俺は師匠にゃ向いて──」

 草助が言ったが、雛菊は聞かない。

「拙者が師匠と言ったら師匠なのだ。文句は言わさん」

「へいへい‥」

 半ば呆れ顔の草助。

 雛菊は一人、悦に入っている。

「では草助師匠、先ずは何から教えてくれるのだ?」

「わりいけどさ、その、師匠‥っての止めてくれねぇかな」

「ならば草助で良いのか?」

 きょとんとして雛菊が尋ねると、

「お前だって、その方が呼びやすいだろ?」

草助は、にぱっと白い歯を見せて笑った。

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