《MUMEI》

さらに2時間が経過。

「よし…、そろそろか」

青年はそう言うと立ち上がり、全員に向けての指令を送る。

「お前らよく聞け。今から約2時間後にはターゲットが目標地点に辿り着く。そして向こうがいくら頑張った所でこの街の住んでいた奴らに手は出せない位置まで進んでいたりする」

彼は嬉しそうに、しかし気を引き締めて続ける。

「だから、だ。オレらも逃げるぞ」

その一言が、今戦っている全員の士気を上げた。トランシーバー越しに嬉しそうな声が聞こえる。

「よってお前ら、今ある銃弾爆弾は全て相手にくれてやれ!」

『了解!』

トランシーバーの向こうから、一度だけそう聞こえた。

その後すぐに、あちこちから爆発音が聞こえだした。青年は笑って振り向いて。

「さぁ、オレ達も逃げるぞ!」

青年はもう一度指令を言う。

「いいか、弾薬を使いきったら逃げろ。前もって逃げる場所は指示してる筈だ。んで、もう一言」

また真剣な表情に切り替えて、静かに言った。

「死ぬなよ」



その傭兵は、たった200で3万と戦った。

人々は、まるで手品師ような彼をこう呼んだという。

「tricker(トリッカー)」と。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫