《MUMEI》 「はい」 先輩はにっこりと微笑んで、おれに綿飴を差し出した。 「ありがとうございますー」 ほぼ棒読みの状態で答えて、綿飴を受け取る。 甘ったるい匂い。 おれが顔をしかめると、 「…人ごみ、苦手??」 先輩が顔を覗き込んできた。 「えー、まあ、はい」 そーゆーことにしとこう。 「そっか、ごめんね。俺知らなくて」 申し訳無さそうに謝る先輩。 「や、別に―…ッ!?」 いきなり手を掴まれて、引っ張られた。 「人の少ないところ、行こうか」 先輩が振り返って微笑む。 男と手え繋ぐなんて、最悪だ… 気持ち悪ぃ。 蓬田、ちゃんとついて来てんのかな? 綿飴の甘ったるい匂いが、おれを憂鬱にさせた。 前へ |次へ |
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