《MUMEI》

私は、昔から人ごみが苦手だった。



でも、椎名くんの目線だと、
人ごみがそんなに苦にならない。


椎名くんの頭を見失わないように後を追っていると、



「あれ!?みつるだ!!」


「うわ、ホントだー!!」



口々に言って、子供たちが飛びついてきた。



「うあ!?」


「何してんのー??1人!?」


「何そのカッコ!!変なのー」



道場の子供たちだ。

私の周りでぴょんぴょん跳ねながら色んな質問をぶつけてくる。



「えっと、ごめん、今急いでるんだ」


「えー??つまんねー!!何、カノジョー??」


「違うって!!ほら、子どもは早く帰らないと―…」


「げー!!みっちゃん普通そんなこと言わねえじゃん!!」



…そうなんだ…



「とっ、とにかく、わた…おれ、用事あるから!!
気をつけて遊ぶんだよー!」



と、手を振って無理やりその場を離れた。



子供たちは不満そうな顔で、口々に文句を言ってたけど、
椎名くんたちを見失ってしまっては元も子もない。



私は、人ごみの中からやっとのことで2人の姿を見つけ出した。

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