《MUMEI》

先輩が、笑顔で椎名くんに綿飴を渡す。


私は、椎名くんが顔をしかめたのに気がついた。

無理して、綿飴頼んだんだろうなあ。


―…きっと、私のために。


そう思うと、嬉しい。



多分、イカ焼きとか食べたいんだろうな。



そんなことを考えていると、



「あのお〜」



間延びしたような、女の人の声。


声のしたほうを見ると、
少し派手な格好をした女の人が2人、私を見て立っていた。



「…はい?」



私が首を傾げると、



「あのお、今ぁ、1人ですかあ??」



と、女の人の片方が訊いてきた。



「??…はい、」



私が頷くと、2人はきゃあっと声を上げた。



「じゃあじゃあ、今からアタシ達と遊びませぇん??」


「へ??」


「だってぇ、おにーさんカッコいいしぃ〜」



そう言って、もう1人の女の人が私のサングラスを取った。



「わ、」



私がびっくりしていると、



「ほらあ!!ちょーイケメンじゃね??」

「やば、まじタイプかもしんない!」



2人できゃあきゃあ言っている。


…これって、まさか逆ナン!?



どうしよ…



って、



「あ――!!」



騒いでいた2人が驚いたように私を振り返る。



…椎名くんたち、見失っちゃった…!!

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