《MUMEI》
雑木林 〈おれ〉
ほんと、ここどこだよ…


雑木林に囲まれた場所。

コンクリート造りの建物。



おれが辺りを見回していると、



「…ここね、昔小学校だったんだよ」



先輩がにこにこと教えてくれた。



「へえ〜…」


「かなめちゃん、あんまり怖がらないんだね」



先輩の意外そうな声。



「え?」


「だって、いかにも何か出そうで怖くない??こういうとこ」


「う〜ん…」



そっか、女はこういうとこ怖がんのな。


おれは、目に見えるものしか信じねえし。



…蓬田に電話でもしようかな。多分見失ってるし。


そう思って、先輩の方を振り返る。



「あの、でんわ―…」



と、先輩がいきなりおれの、じゃない―…『蓬田』の肩に手を回してきた。



「!?」



驚いていると、



「…かなめちゃん、」



蓬田の名前を呼んで、先輩が顔を近づけてきた。


しばらく、何なのか分かんなかったけど、

やっと状況を把握した。



これって、



き、キスか!?



おれ、男にキスされんのか!?


無理!!



―…違う、『蓬田』がキスされるんだ、



どんっ!!



「蓬田が先輩とキスする」



そんな考えが頭をかすめた瞬間。



おれは、先輩を突き飛ばしていた。

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