《MUMEI》 「マジ、ありえねーよ」 先輩の声だけが、聞こえてくる。 相手は誰だかわからない。 「え?…うん、だからさー…違う違う、2年の!! そう、蓬田かなめって、さっき言ったろ??」 ―…やっぱり、蓬田のこと話してる。 「―…だーから、もー最悪だって。 …うん、キスどころか手も握らせねーの。 ガード堅すぎっつーの?? ジイシキカジョーじゃん??」 笑い声に混じるその声は、ひどく不愉快に響いた。 「うん??あー、そう。 俺もそっち行けば良かったー、マジ失敗。 …え、まだ残ってんの?マジ??顔は?」 何の話、だ?? 「えー??…まあ、ヤらせてくれるんならいっか!! …え??いんだよ、『かなめちゃん』はどーせ、 ヤらせてくんねえもん」 ぎゃはは、と下品な笑い声が響き渡る。 サイテーな気分だ。 蓬田に、散々『鈍感』呼ばわりされたおれでも、分かる。 ―…『西城先輩』は、サイテーの男だってこと。 「んじゃ、今からそっち行くわ」 最後にそう言って電話を切った先輩が、こっちに向かってくる。 おれは、隠れていた木から離れて、 『西城先輩』の前に立ちふさがった。 前へ |次へ |
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