《MUMEI》

しばらくの沈黙。


決まり悪そうに目を逸らしていた先輩が
おれに目を向けた。



「…聞いてた??」



おれが黙って頷くと、



「うわー、マジかよ」



と、小さく呟いた。



「…謝れよ」



おれが言うと、



「…はい??」



先輩が半笑いでおれを見た。



「…謝れっつったんだよ、ボケ」



先輩の目の色が変わった。



「…あ??」



おれは、先輩に詰め寄った。
おれが見上げる格好になる。


…くそ、ホントならおれが見下ろすはずなのに…。



「…ふざけんなよ、てめえ。
蓬田がどんだけアンタのこと好きか分かんねえのかよ」


「はあ??…何言ってんの。
大体、俺の事好きなんだったらいいじゃん、何されてもさ」



そう言って先輩はおれの肩を掴むと、
木に強く押し付けた。



「…っざけんな…っ」



…悔しい。



蓬田の好きな男が、こんなサイテーなヤツだったことも、


こんなヤツに、蓬田が傷つけられることも。



先輩が、おれを地面に押し倒した。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫