《MUMEI》

「それでな、言ってやったんだ。

親父に。

“野球は個人プレーじゃダメだ”って。

“幾ら一人がずば抜けてうまくても、
意味が無い”って。」


「キレただろ?」


「うん。
最初はな…。

でも何回も本音をぶつけたら、
渋々納得して貰えたよ。」


「蓮翔ちゃんの父さんが?!」


「うん!!」


凄いな。


俺は改めて蓮翔ちゃんを見やった。


今のようにチームメイトとふざけ合ったり出来たのは、
蓮翔ちゃんが必死に蓮翔ちゃんの父さんに抗議したからだ。


どれぐらい勇気を振り絞ったのだろう。


「颯ちゃんも、本音をぶちかませば良いじゃん!」


「無理だよ。」


「どうして…?」


俺は口には出さずに、
胸中で呟いた。


俺と蓮翔ちゃんとでは違うんだよ…。


そうして、ある日のことを思い出していた。

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