《MUMEI》

 草助は人気のない長屋の一角に雛菊を連れて来ると、背負っていた荷物を降ろした。

「今日は‥此所で夜を明かすのか?」

「ああ、屋根があるだけまし、ってな」

 呑気に言いながら、草助は荷物の中から握飯の包みを二つ取り出すと、一つを雛菊に放ってやる。

「な‥、何だこれは‥!?」

 受け取ったはいいものの、それが何だかを知らない雛菊は警戒している。

「ん‥お前、握飯食った事ねぇのか?」

「‥ぁ‥あるにきまっておろう‥!」

 些か強めの口調で雛菊は言い、恐る恐る包みを開いた。

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