《MUMEI》

歩いてると、結構な数の女の子が、
すれ違うたび私を振り返ってるのに気付く。


…椎名くん、こんな視線に気付かないなんて、逆にすごい…



2人も見つからないし、女の子の視線にも疲れて
ちょっと途方に暮れた頃、



着信音が鳴った。



あ、そっか。電話かメールすればよかったんだ。


自分で言ってて、気付かなかった…


通話ボタンを押す。



『あ、もしもし?』


「も、もしもし…」



『私』の声…でも、椎名くんの言葉。



すごくほっとして、なんだか泣きそうになる。



『どうした?何かあったのか!?』



すごく心配そうな椎名くん。

もう大丈夫。声を聞いて安心した。



「…椎名くん…もてすぎ…」


『はあ?何だそれ』


「ううん、こっちの話…。
椎名くんこそ、どうかしたの??」


『…………』




椎名くんが黙ってしまった。

…どうしたんだろう??
やっぱり、何かあったのかな!?



「どうしたの?今どこにいるの??
私、見失っちゃって―…」


『ああ、そうだ、今小学校の―…』



小学校…??


人ごみのざわめきで、声が聞き取りづらい。



「…もしもし??椎名くん?」


『しっ、また後で掛け直す』



そう言って、椎名くんは電話を切ってしまった。



何があったんだろう。



不安が胸に広がる。




小学校って…??


ざわめきの中、私は携帯を握り締めたまま立ちすくんだ。

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