《MUMEI》

昼休みになった。
「周哉、飯食おうぜ」
昇が昼食に誘ってきた。
「おう」
「あれ、秋穂ちゃんは?」
「え?」
周哉が隣にある秋穂の席を見たが、そこに秋穂はいなかった。
「どこ行ったんだ?」
「あ、あそこにいるぞ」
昇が指さした方向を見ると、秋穂が奈々と春と話していた。
「何してんだろ?」
「多分オレに聞いた事と同じ事を聞いてんじゃねぇの」
「あぁ、そうか。じゃあ先に食ってよ」
そう言って、二人は昼食を食べ始めた。
「あ、そういえば」
周哉がパンを食べながらしゃべり始めた。
「ん?何だよ」
「この前さ、バスケの試合見に行ったじゃん」
「ああ、行ったな」
「そん時さ、父さんが再婚したって言ったじゃん」
「ああ、言ったな」
「で、そん時さ、再婚祝いにジュース奢ってくれるって言ってなかった?」
昇の箸を動かしている手が止まった。
「・・・言ったっけ?」
「言った」
即答する周哉。
「でもさ、別にお前が再婚した訳じゃないよな」
「約束破るんだ」
「オレさ、最近ずっと金欠なんだけど」
「約束破るんだ」
昇も反論するが、周哉は全く受け付けない。
最終的に昇が折れた。
「しょうがねぇな、何が良いんだよ」
「お茶で良いよ」
「わかった、買ってくる」
は〜、と何度もため息をつきながら、昇は教室から出て行った。

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