《MUMEI》 どうしよう、電話かけ直してみようか… でも、椎名くんはかけ直すって言ってたし… 悩んでいると、 「…椎名君…??」 また、聞き慣れた声。 視線を声の方へ向けると、 祥ちゃんが1人で立っていた。 「しょ…青木」 「どうしたの?まだ人見つからないの??」 「うん、…まあ。 あれ?あとの2人は??」 「ああ、はぐれちゃっって…」 そう話す祥ちゃんに、男の人がぶつかってきた。 「きゃ、」 「わ、」 つまづいた祥ちゃんが、私の腕につかまる。 「―…大丈夫??」 「う、うん。ごめんね」 「人多いね、ちょっと離れようか」 「う、うん」 私は祥ちゃんの手をひいて、人ごみから抜け出した。 「ありがとう」 祥ちゃんがにっこり笑って言う。 …やっぱり、美人だなあ… 「ううん。わた…おれも、人ごみ苦手だし」 「そっか」 そんな会話を交わしている時、 「おい!!」 大きな、『私』の声がした。 振り向くと、 息を切らした『私』―…椎名くんが仁王立ちしていた。 「…帰るぞ」 そう呟いて、私の腕を掴むと、 椎名くんはすたすたと歩き出した。 椎名くんは、祥ちゃんの存在に気付かなかったようだ。 祥ちゃんが驚いた目で私達を見ている。 「え、ど、どうしたの!?」 「…いいから、」 有無を言わせない口調で椎名くんは言って、 私の腕を掴む手に力を込める。 …一体、何があったの…!? 私は、不安な気持ちを抱えたまま 椎名くんに従った。 前へ |次へ |
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