《MUMEI》

教室に入るなり、



「みつる!!」



瀬田くんが私を自分の席まで引っ張っていった。



「…お前さ、昨日の祭り行った??」



瀬田くんが抑えた声で訊ねる。



「…へ??」


「…だよな、お前が祭り行くわけねーよな」



瀬田くんはそう言うと、イスに座りなおした。



「え??…お祭りがどうかしたの?」



私が聞くと、瀬田くんは、



「聞いてねえの??…3年のさ、西城浩太っているじゃん?」



と、切り出した。


先輩と、お祭りに何の関係が…??



「それがさ、祭りで誰かに襲われたらしいんだよね」


「…えっ」


「や、怪我は大したことねえらしーんだけど、
なんか、廃校になった小学校の裏でさ、
ほら、あそこ人通りねーじゃん??
…あそこで、カップルが気絶してるソイツ見つけたんだってさ」


「―………!!!」



私は、『私』―…椎名くんの席のほうを見る。


椎名くんは、何人かの女の子に取り囲まれて、
俯いて黙っている。


…きっと、先輩のことで質問攻めにあってる。



「何に襲われたんだろーな。財布とか盗られてたワケじゃないってよ」



…小学校、って



椎名くんは、あの電話の時、
『小学校』って言った。



あの電話のとき、何かがあったんだ。



私は、椎名くんの座っている机に近づいた。



「あれ?…おい、みつる!?」



瀬田くんが、驚いて声を掛ける。


椎名くんの周りに集まっていた女の子達も、
驚いて私を見上げる。



「…ちょっと、いい??」



静かな声で私がそう言うと、



椎名くんが、顔を上げた。

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