《MUMEI》

入ってきたのは金原で、金原はおれを見るなり



「よかったあ〜」



と、胸を撫で下ろした。



「どうしたの??」



青木が尋ねる。


…話が逸れてくれて、助かった。


なんか怖えんだもん、青木。



「それがさ…」



金原が話すには、こうだった。



昨日、お祭りの最中に、
3年の西城先輩が何者かに襲われた。
怪我は大したことは無いが、
人通りの少ない場所で発見され、何も盗られていないため、
先輩に恨みのある者の仕業かもしれないと噂されてる。


「イケメンだしね〜。フられた女か、
女盗られた男からの恨みかも」


と、金原は付け足した。


金原はこの噂を今朝聞いて、
先輩とその日一緒だったはずの蓬田のことを思い出し、
慌てて教室に駆け込んだそうだ。



「…でもね、先輩は『転んだ』で通そうとしてるらしいよ」


「何それ」


「さあ??…襲われたってのが恥いんじゃない?」



青木と金原の会話に、ほっとする。


まあ、やましいことだらけで、
警察行けるわけねえよな。

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