《MUMEI》

「香織さん、いい…??」



蓬田は、保健室のドアを開けると、
おずおずと聞いた。



「…1時間目までなら、空けてあげられるわ」



そう言うと、香織センセーは何も聞かず、
すっと保健室から出て行った。

ドアに『立ち入り禁止』の札をかけて。



蓬田は、おれを振り返ると、



「…昨日、何があったのかちゃんと話して」



と、真直ぐな目でおれを見つめた。

おれはすぐに目を逸らす。



「…だから、何もないって…」


「うそ!…昨日、
電話で『小学校』って聞こえたよ。
あのとき、先輩と一緒にいたんでしょう??」


「………」


「ねえ、椎名くんも何か事件に巻き込まれたんじゃないの??」



蓬田の目に、不安げな色が宿る。



「……だよ」


「え??」



おれは、蓬田の目を真直ぐに見つめ返して、
はっきりと言い直した。







「おれが、やったんだよ」

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