《MUMEI》 しばらくそのままのスピードで車は走る。 赤信号を直進しては、急停車した車からクラクションを浴びせられた。 それを無視して走り続け、街を二つ過ぎた辺りでようやくユウゴは車を停めた。 いや、停めたというよりは停まってしまったというべきだろう。 いくらアクセルを踏んでもスピードは出ず、ついにはエンジンも停まってしまったのだ。 「なんだよ、ったく……」 ユウゴは舌打ちしながら車を降りると、車体を調べた。 所々に丸い小さな穴がある。 弾が当たった痕だろう。 ボンネットの中からは白い煙が上がり始めていた。 「しょうがねえ、歩くか」 ユウゴは呟きながら、周りを見渡した。 繁華街を少し外れ、辺りは静かな住宅街だ。 時刻はすでに深夜を過ぎている。 明かりがついている家は少なかった。 近くに追撃隊はいないようだが、今までの目撃情報や道路に設置されてあるカメラから、車の位置はすぐにわかってしまうだろう。 早くこの場から離れなければならない。 ユウゴは今日の寝床を求めて歩き出した。 前へ |次へ |
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