《MUMEI》 「何か──御捜しですか」 声を掛けると、一瞬驚かれた様子でアンリ様が振り向かれました。 「リュート‥?」 きょとんとした眼差し。 それでいて、何処か安堵したような表情を浮かべてらっしゃいます。 「捜しに‥来てくれたの‥?」 「ぁ‥その‥御部屋にいらっしゃらなかったもので──」 「ごめんね、心配かけて‥」 「いえ、御気になさらないで下さい」 「‥怒っていないの‥?」 目にうっすらと涙を浮かべてアンリ様が御尋ねになったので、僕は御側へ行き、跪いて、 「アンリ様が御無事なら、それでいいんです」 そっと、零れた涙を拭って差し上げました。 前へ |次へ |
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