《MUMEI》

御話によると──、アンリ様は御部屋にいらっしゃったのですが退屈なさっていて、地下室にトランプがしまってあるのを思い出されて此処へいらした所、捜す事に夢中で時間を御忘れになっていたようです。

「まだ‥御捜しになってらっしゃるんですよね──」

コクリ、と頷かれ、アンリ様は再び捜し始めようと辺りを見回します。

「御手伝いさせていただいても──宜しいですか」

「ぇ──」

 アンリ様の碧い瞳が、輝いて見えます。

 僕は微笑んで、片手を差し延べました。

「少しでも──お役に立てればと思いまして」

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