《MUMEI》

地下から1階へと戻って来た頃には、いつの間にか夕方になってしまっていました。

ドレスを着替えて頂いてから、アンリ様を広間へ御連れしました。

「ごめんね、折角──紅茶用意してくれていたのに‥」

「大丈夫ですよ、もう1度淹れ直しますので御安心を」

「いいの‥?」

「はい、勿論でございます」

「ありがとう──」

アンリ様は仰って微笑むと、抱えられていた箱をソファに降ろして席に着かれました。

淹れ直した紅茶を御出しすると、シフォンケーキと共に美味しそうに御召し上がり下さいました。

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