《MUMEI》 「ですが──‥」 「お願い。ね?」 そのように甘い声で仰られては、断る訳には参りません。 「はい、──畏まりました」 手渡されたトランプを扇形に広げて、再びゲームが始まります。 それを繰り返す内、すっかり夢中になってしまって──もういつもの晩餐の時刻を過ぎてしまっていました。 「何か──御作りしますね」 「ジンジャーエールをお願いしてもいい?」 「ジンジャーエール‥ですか?」 アンリ様が教えて下さった事によると、それを飲むと体がぽかぽかと温かくなるのだとか。 今日はいつもより冷えていますから──アンリ様は暖かい飲み物が恋しくなられたようです。 前へ |次へ |
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