《MUMEI》

「なー百合は駄目なの?」

形の美しい外車と共に聞き覚えがある大声。


「七生さん、病人には香りの強い花はよくないんですよ。」

張りのある美しい音の声。


「百合いいのにな、かーちゃんは百合似合ってたんだよ、かーちゃんが百合持って笑ってる写真が俺1番綺麗だって思った。」

知ってる。何度もアルバムをめくった。





「安西、行こうか。」

振り向いたら負けだ。
振り向いたら、泣く。

ガーベラを折れないように握りしめる。




「先輩、涙、綺麗……」

安西…………
気付いてるのかな?


「もっと優しくして、安西……」

……俺って尻軽なのかも。
安西に片手を繋いで貰わないと保てない。

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