《MUMEI》
ウソ
 おばさんが連れて行ったのは二階の一室で、三人が寝泊まりするには十分過ぎるのスペースで、ソファーに簡易のキッチン、テーブルにベッド一つに、ベランダまであった。
 「気兼ねなく使っておくれ、自分の家だと思って」
 おばさんは気を使ったのかさっさと退場していった。おばさんの階段を下りていく音を聞き、
 「あ〜あ、おばさんに大ウソついちゃった。私たちが兄妹ですって」
 部屋のなかを見ながらメリルは笑う。
 「別にいいんじゃねえの、大した嘘じゃないって。兄妹で間違ってるわけでもないし、俺たち」
 「ま、そうなんだけど」
 「ねえメリルちゃん、お掃除してもいいかな、おばさんに雑巾借りて」
 掃除の行き届いていないのに気づいたクレアがメリルに許可をもらおうとしている。
 「ええ、それじゃあ一緒にやっちゃおう、これからしばらくはここで暮らすんですもの」
 クレアはなにをするにもまず誰かに相談する癖がついていて、いつもメリルかファースに聞いて行動していた。
 「うん、じゃあおばさんのところに行ってくるね」
 元気に駆けていく、その背中からはどこか楽しげな感じがしていた。

 部屋の掃除を始めた二人を、色落ちした継ぎ接ぎのソファーに体を預け眺めているファース。はしゃぎながら掃除をする二人が動くたびキシキシという音が部屋中に響いていた。
 笑い声が絶えない部屋の中にいると、処刑台に縛られていたのが嘘のようだった。

 『俺だってさっぱり分かんねよ。濡れ衣だって、軍の奴らが勘違いしたんだ・・・・・俺は何もしてない』
 あの時のシーンが蘇る。

 二人にウソついちまった。これまでで最低のウソだな、どうして正直になれなかった。あのときならまだ許してもらえたかもしれないのに。

 何もしていないなんて言って、本当はしていた。人間のクズがするようなことを・・・

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