《MUMEI》
ずっと見てきた
勇樹の事、ずっとずっと見てきた。
それはもう長い。
小学生の頃からだ。
勇樹が転校してきた日から、ごく自然に一緒にいる様になった。
いや、俺が一方的に近くにいたのだけど。
小6の時、勇樹の母親が家の中で薬を飲んで自殺した。
数日俺の家で彼は過ごした。
涙を流す事もなく、でも一人になれない彼をいつまでも抱きしめていた。
その頃から、
俺は彼を友人としてではなく、恋愛対象として好きなのだと、自覚してきた。
勇樹がむやみやたらにバイトしている理由なんか聞かなくたって知っている。
家にいれないんだ。
あの家に……
母親が自殺したあの家に……
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