《MUMEI》

「何かあんのか‥?」

 それとなく察したらしい草助が尋ねた。

 雛菊は彼に背を向けたまま、竹刀を握り締めている。

「拙者は‥強くなりたいのだ。‥自分の身を‥自分で守れるよう‥」

「華郎‥?」

「誰かに助けて貰わずとも‥自分で‥」

「そんなに焦るこたねぇよ」

「‥ぇ」

「俺だって危ない時位あるぜ? 前なんか背中から──」

「‥お前は強いでは無いか」

 このままでは泣き出し兼ねないと悟ったか、草助はゆっくりと立ち上がり、脇を擦り抜けて彼女の前に出る。

「強さなんてぇのは、そいつの気持ち次第でいくらでも跳ね上がるんだぜ?」

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