《MUMEI》

「‥ぇ‥」

 目に涙を溜めたまま、雛菊が顔を上げた。

「お前‥本気で言っているのか‥?」

「おうっ。本気だぜ、俺は」

 にぱっと笑顔を見せる草助に、雛菊は思わず笑みを零した。

「そのような事を聞いたのは初めてだな──」

「お前、どっかで習って来たんだろ?」

「‥ああ、一応‥はな」

「どれ、そろそろ相打ちやってみるかぁ」

「‥!?」

 訊き返す間もなく、雛菊は何とか竹刀を柄で受け止める。

(‥速い‥)

 尋常とは思えん速さだ、と雛菊は思う。

 同時に、

(こいつ‥)

 只者では無い、そう直感した。

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