《MUMEI》
頼の視線
「…どうなんだい?」

「昔の話ですよ」

「でも、忘れられないんだよね」

「…」


(何の話だ?)


突然変わった雰囲気に、俺はついていけなかった。


果穂さんは、大志さんに全て任せていて無言だし


厳も、首を傾げていた。


…が。


「もしかして、エイミーの事?」


ポツリと言った厳の一言。


「違う」



(嘘だ)


俺は、一瞬


ほんの一瞬、頼の目が大きく開いたのを見逃さなかった。


しかし


「だよな。エイミーと祐也、似てないし」


厳は、すぐに頷いた。


「そうだ、…似てない」


そう言いながらも


(何だよ、その目は)


頼は、切ないような熱い眼差しを俺に向けてきた。


「そうだね。でも、青い瞳はそっくりだと思うよ」

「…青い瞳なんて、普通でしょう?」


頼がいたのは、アメリカ


青い瞳の人間は、普通にいる。


「そうだな…」


答えたのは、大志さんではなく、頼だった。


(だから、何でそんな目で俺を見るんだよ)


「あの、俺…帰ります」


いたたまれなくなって、俺は高山家を後にした。


頼の視線から、早く逃れたかった。

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