《MUMEI》

何もわからないまま


役立たずなまま


私は、十五になっていました。


そして


明日からは、十六


『やっと、結婚できる年になってくれたね』


嬉しそうな、旦那様


…嬉しくない、私


『一人前の女性だ』


嬉しそうな治人様


…嬉しくない、私


『本当に、やっとだな』


嬉しそうな昭人様


…嬉しくない、私


でも


『そうですね。私も…嬉しいです』


喜んで下さる方々を悲しませたくなくて


私は、笑顔で答えました。

お屋敷で、ただ一人、役立たずな私


そんな私にできる事は


笑顔でいること


『好きだよ』と言われたら
『大好きです』と答えること


それだけだったのです

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