《MUMEI》

「ねぇ、お庭に出てみない?」

雪に目を輝かせながら、アンリ様が仰いました。

「お庭に‥ですか?」

外は雪が降っています。

御風邪を召されないか、少し不安なのですが──‥

「はい、参りましょう」

こんなにもキラキラと目を輝かせてらっしゃるのに御断りするのは気兼ねがしたので、僕はひとまず、アンリ様のコートや帽子を取りに向かいました。

ダッフルコートと、ミトン型の手袋、マフラー、そして、毛糸の帽子。

アンリ様がそれらを召されると、僕は黒いコートを羽織って玄関の鍵を開けました。

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