《MUMEI》

「お前はいつから放浪をしているのだ? 草助」

 刀を鞘に納め、雛菊が尋ねた。

 草助は暫し唸っていたが、

「いつからだったっけかなぁ」

と惚けた。

「拙者は真面目に訊いておるのだ」

 雛菊が詰め寄ると、草助は立ち上がり天を見上げる。

「お前よりはずっと前から──だな」

「‥何故、放浪など‥?」

「ん? 気になんのか?」

 ふざけたように言った草助に、

「た‥只訊いただけだっ」

雛菊はそう言い顔を伏せる。

「何か──色んなとこ回りたくなっちまったんだよなぁ」

「‥?」

「世の中広いだろ? 色んなもん見て、色んな奴に会って──そういうのに惹かれたっていうかさ」

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