《MUMEI》

僕がきょとんとしていると、アンリ様は頬を染めて、

「ぁ、ごめん‥笑ったりして──」

小さく遠慮がちに仰り、僕から目を逸してしまわれました。

「そのような御顔をなさらないで下さい、アンリ様」

「‥?」

不安げな色を浮かべて、アンリ様は僕の目を見つめてらっしゃいます。

「あのね、ただ‥あまり気を遣わなくてもいいような気がして──」

「アンリ様は、僕の崇拝すべき御方です。ですから、やはりこのようにさせて頂くのが宜しいかと」

「疲れない‥?」

「──楽しいんです」

「楽しい‥?」

「はい、とても──」

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