《MUMEI》

椎名くんを探さなきゃ。


私は、校舎に向かって走った。


…椎名くんを、叩いてしまった。



ひどいことを言ってしまった。



椎名くんは何も悪くなかったのに。


―…私は


いつもいつも、守ってもらってたのに。



椎名くんの、あの優しい笑顔に救われていたのに。



―…謝らなくちゃ。



でもその前に、




『ありがとう』を、言わなくちゃ。




―…守ってくれて、ありがとう。


似合わない嘘をついてくれて、ありがとう。



…私を助けてくれて、ありがとう。




そうだ私は、



椎名くんに助けてもらったから



今、生きてるんだ。




教室のドアを開けると、



教室を照らす夕日の中に、




祥ちゃんが、居た。

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