《MUMEI》

「ああ、椎名君」



祥ちゃんが、にっこりと微笑んだ。



「…そんなに急いでどうしたの?
授業も、今日出てなかったし…」



首を傾げる祥ちゃん。



「…いろいろ、あって。―…それより、」


「…それより??」


「…し、蓬田、見なかった??」



私が訊くと、祥ちゃんは微笑みを消した。



「…かなめなら、図書館にいると思うよ」



「そっか、ありがとう!!」



私は鞄を取ると、教室のドアへ向かって駆け出した。



「ねえ、」



祥ちゃんの声に立ち止まって振り向く。



「…かなめ、今傷ついてると思うんだ。
…かなめの好きな人にね、いろいろあって…
だから、そっとしておいて欲しいの」



そう言って、私を見つめる祥ちゃん。


…やっぱり、優しいなあ。



私は、微笑んで答えた。



「…わかった、じゃあね」


「うん、ばいばい」



―…図書室に、行かなくちゃ。

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